【電験2種 2次試験対策】ベクトル図で攻略!送電線路の電圧降下のメカニズムと近似式

地絡・短絡計算に並んで、電力・管理科目で確実な得点源にしておきたいのが「送電線路の電圧降下」に関する計算問題です。

複雑な公式を丸暗記しようとすると、試験本番で少し条件を変えられただけで崩壊してしまいますが、「ベクトル図(フェーザ図)」を自分で描けるようになれば、公式は暗記しなくてもその場で導き出せるようになります。今回は、電圧降下のメカニズムと、2次試験で必須となる実践的な公式の成り立ちを解説します。

1. なぜ電圧降下は起こるのか?

発電所(送電端)から送り出された電気は、変電所や需要家(受電端)に届くまでに、長い送電線を通ります。この送電線には必ず「電気の通りにくさ」が存在します。

・抵抗 R:電線そのものが持つ電気抵抗(Ω)

・リアクタンス X:交流電流が流れることで周囲に磁界が発生し、電流の変化を妨げようとする力(Ω)

送電端の線間電圧を Vs、受電端の線間電圧を Vr、流れる線電流を I とすると、直感的には「 Vs から線の抵抗分を引いたものが Vr になる」と考えたくなります。しかし、相手は交流です。電流と電圧には「位相のズレ(力率角 θ)」があるため、単純な足し算・引き算ではなく、ベクトルの世界で考える必要があります。

2. 電圧降下のすべてを物語る「ベクトル図」

電験2種の2次試験では、「ベクトル図を描け」という問題が直接出題されることもあります。以下の手順で頭の中に描けるようにしておきましょう。(※ここでは1相あたりの相電圧基準で考えます)

手順1:基準となる「受電端電圧」を水平に右向きに引く。

手順2:負荷の力率角 θ だけ遅れた(下を向いた)方向に「電流 I」のベクトルを引く。

手順3:受電端電圧の先端から、電流 I と同じ平行な向きに「抵抗による電圧降下 IR」を足す。

手順4:IR の先端から、電流 I に対して垂直に90度進んだ(上を向いた)方向に「リアクタンスによる電圧降下 IX」を足す。

手順5:スタート地点(原点)から手順4の先端までを結んだものが「送電端電圧」になる。

この直角三角形の積み重ねが、送電線路における電圧のリアルな姿です。

3. 試験で使える「電圧降下の近似式」

ベクトル図を正確に計算して送電端電圧を求めようとすると、三平方の定理を使うことになり、ルートの中に二乗が入る非常に面倒な計算になります。

しかし、実際の送電線路では、受電端電圧に対して電圧降下分(IR や IX)は非常に小さいため、ベクトル図の「縦方向のズレ」は無視して、「横方向の成分」だけを足し合わせれば、ほぼ送電端電圧の長さと同じになるという近似が成り立ちます。

この横方向の成分を取り出し、さらに三相3線式の線間電圧に直す(ルート3倍する)と、電圧降下 ΔV( = Vs – Vr )は以下の有名な近似式になります。

$$\Delta V \approx \sqrt{3} I (R \cos\theta + X \sin\theta)$$

※ cosθ は力率、sinθ は無効力率(遅れ)を表します。

4. 2次試験で最強の武器になる「PとQの公式」

実は2次試験の計算問題において、上記の電流 I と力率角 θ を使った公式をそのまま使う場面はあまり多くありません。なぜなら、問題文では「有効電力 P」と「無効電力 Q」が与えられることがほとんどだからです。

そこで、三相電力の公式を活用して、先ほどの近似式をさらに使いやすく変形します。

有効電力 P = √3 × Vr × I × cosθ

無効電力 Q = √3 × Vr × I × sinθ

この関係式を、先ほどの電圧降下の近似式に当てはめると、電流 I や角度 θ が綺麗に消去されて、以下の美しい公式が導き出されます。

$$\Delta V \approx \frac{P R + Q X}{V_r}$$

この公式が、電験2種における電圧降下計算の「マスターキー」になります。

「有効電力 P は抵抗 R と結びつき、無効電力 Q はリアクタンス X と結びついて電圧を降下させる」というイメージを持っておくと、式の形を忘れにくくなりますし、計算ミスも防げます。

まとめ

送電線路の電圧降下問題は、以下のステップで処理します。

  1. ベクトル図をイメージして、電流と電圧の位相差を把握する。
  2. 有効電力 P と無効電力 Q、そして線路の R と X を整理する。
  3. 公式 ΔV = (PR + QX) / Vr を使って電圧降下幅を求める。

この基本形さえ押さえておけば、あとは受電端にコンデンサや分路リアクトルを接続して無効電力 Q をコントロールし、電圧を一定に保つといった応用問題にもスムーズに対応できるようになります。

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