中学校に入学して最初の数学の授業。
ここで私たちは「0より小さい数」である「マイナス」という存在に出会います。
足し算や引き算は「温度計」や「借金」をイメージすればなんとなくわかりますよね。
しかし、掛け算に入った途端、全国の中学1年生がこの謎のルールに直面してフリーズします。
$$(-3) \times (-2) = 6$$
マイナスとマイナスを掛けたら、なぜかプラスになる。
先生に理由を聞いても「そういうルールだから覚えなさい」と言われて、数学が嫌いになってしまった人も多いのではないでしょうか。
今日はこの「マイナス×マイナスの魔法」について、理屈ではなく、直感で「そういうことか!」とスッキリできるお話をします。
マイナスは「量」ではなく「向き」である
まず、マイナスという記号を「数がないこと」や「借金」というイメージから、「反対向きのビデオ再生」にアップデートしてみましょう。
マイナスとは、ずばり「時間を逆戻りさせる」あるいは「反対の方向に進む」というリバーススイッチなのです。
お小遣い没収の悲劇で考える
ここに、毎日おやつを買いすぎて、親から「毎日500円ずつお小遣いを減らす!」と宣言された中学生がいるとします。
つまり、この子の1日あたりの増減は -500円 です。
さて、この状況が続くとどうなるでしょうか。
1日ごとに -500円 されるわけですから、3日後(プラス3日)の所持金は、今よりも1500円減ってしまいますよね。
これを式にするとこうなります。
$$-500 \times 3 = -1500$$
減る量(マイナス)が、未来(プラス)に向かって進むので、結果はマイナスになります。ここは感覚的にもわかりやすいはずです。
時間を巻き戻してみよう
では、ここからが本番です。
「3日後」ではなく、時間を巻き戻して「3日前」のことを考えてみましょう。
「3日前」は、時間軸を逆に進むので -3日 と表現できます。
毎日500円ずつ没収されているこの子ですが、逆に言えば、3日前は「今よりもお金をたくさん持っていた」はずですよね?
具体的には、今よりも 1500円多かった(プラス1500円)ことになります。
これを数式に当てはめてみましょう。
1日あたり -500円 のペースで変化している状態を、 -3日(3日前)に巻き戻すと、今よりも 1500円多い(プラス1500円)状態になる。
$$-500 \times -3 = 1500$$
どうでしょう!
減り続けている状態(マイナス)を、過去に巻き戻す(マイナス)と、結果的に昔の方が豊かだった(プラス)というわけです。
マイナス×マイナスがプラスになるのは、ただの暗記ルールではありません。
「減っているビデオを巻き戻して見ると、増えているように見える」という、私たちの日常の感覚と完全に一致する自然な現象なのです。
おわりに:数学は「つじつま合わせ」の天才
マイナスの数が発見された大昔、数学者たちも「0より小さい数なんてありえない!」と大論争をしました。
しかし、「マイナス×マイナス=プラス」というルールを作ってあげると、世の中のお金の計算や、物理の計算のつじつまが、面白いようにピッタリと合うことに気づいたのです。
中学校の数学は、ただ計算式を解くためだけのものではありません。
「このルールを作れば、世の中の現象を矛盾なく説明できるぞ!」という、先人たちの天才的なひらめきをたどる旅なのです。

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