ブロック線図を一つにまとめた後、エンジニアとして最も気になるのは「このシステムは安定して動くのか、それとも制御不能になって暴走(発散)してしまうのか」という点です。
今回は、実際にシステムを動かしたり、複雑な微分方程式を解いたりすることなく、数式の係数を見るだけで安定性を一発判定できる「ラウスの安定判別法」を解説します。
1. 安定・不安定を決める「特性方程式」
システムの安定性は、閉ループ伝達関数の「分母」によって決まります。この分母をゼロとおいた方程式を特性方程式と呼びます。
$$1 + G(s)H(s) = 0$$
この方程式を解いて得られる s の値(極)が、すべて複素平面の左半分(実部がマイナス)にあれば、システムは時間が経つにつれて落ち着き、安定します。逆に一つでも右半分(実部がプラス)にあると、出力は無限に大きくなり、システムは暴走します。
2. ラウスの安定判別の準備:必要条件
高次の多項式を解くのは大変ですが、ラウスの方法を使えば簡単です。まず、特性方程式を次のように整理します。
$$a_n s^n + a_{n-1} s^{n-1} + \dots + a_1 s + a_0 = 0$$
判別を始める前に、まずは以下の必要条件をチェックしてください。
- すべての係数( a_n から a_0 まで)が同じ符号(通常はすべてプラス)であること。
- 途中の次数の項が抜けていない(係数がゼロでない)こと。
この時点で欠けている項があったり、マイナスの係数があったりすれば、そのシステムは即座に「不安定」と判定されます。
3. ラウス配列の作り方
必要条件をクリアしたら、係数を並べて「ラウス配列」という表を作ります。ここでは3次方程式を例に説明します。
$$a_3 s^3 + a_2 s^2 + a_1 s + a_0 = 0$$
表の最初の2行に、係数をジグザグに並べます。
| 次数 | 1列目 | 2列目 |
| s^3 | a_3 | a_1 |
| s^2 | a_2 | a_0 |
| s^1 | b_1 | |
| s^0 | c_1 |
3行目以降の b_1 や c_1 は、以下の計算(たすき掛けのようなイメージ)で求めます。
$$b_1 = \frac{a_2 a_1 – a_3 a_0}{a_2}$$
$$c_1 = \frac{b_1 a_0 – a_2 \times 0}{b_1} = a_0$$
4. 安定性の判定ルール:第1列に注目!
配列が完成したら、一番左側の列(第1列)の符号だけを見ます。
判別ルール:
第1列の要素( a_3, a_2, b_1, c_1 )に符号の変化がなければ、そのシステムは安定です。
もしプラスからマイナスへ変わるなどの「符号の変化」があれば、その回数だけ、複素平面の右半分に不安定な解(極)が存在することになります。
まとめ:実戦での活用
電験2種の試験では、「システムが安定となるためのゲイン K の範囲を求めよ」という形で出題されます。
- 閉ループ伝達関数を求め、分母をゼロとおいて特性方程式を作る。
- 特性方程式の係数に K が含まれた状態でラウス配列を作る。
- 第1列のすべての要素が「 > 0 」となるような K の不等式を解く。
この手順さえ守れば、高次の方程式であっても確実に安定限界を割り出すことができます。

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