電験2種の「機械・制御」科目において、自動制御は計算のパターンが決まっており、マスターすれば「電力・管理」よりも安定した得点源になります。
その中心となるのが「伝達関数」です。難しく考えがちですが、エンジニアリングの視点で見れば、伝達関数とは「ブラックボックスの入出力特性を記述した仕様書」のようなものです。
1. 伝達関数とは何か?
自動制御における「伝達関数」とは、あるシステムに入力(Input)を与えたとき、どのような出力(Output)が出てくるかという「比率」を数式で表したものです。
通常の時間領域(t)の世界では、微分や積分が入り混じった複雑な式になりますが、ラプラス変換を用いて「s」の世界へ持っていくことで、単なる「掛け算と割り算」で扱えるようになります。
$$G(s) = \frac{\text{出力のラプラス変換 } Y(s)}{\text{入力のラプラス変換 } X(s)}$$
つまり、出力 Y(s) を知りたければ、入力 X(s) に伝達関数 G(s) を掛けるだけで済むようになります。
2. フィードバック制御系の基本構成
実際の試験に出るのは、出力の一部を入力側に戻して調整する「フィードバック制御系」です。
- 前向き伝達関数 G(s):入力側から出力側へ向かうメインのルート。
- フィードバック伝達関数 H(s):出力を入力側へ送り返すルート。
- 偏差 E(s):目標値(入力)と現在の状態(出力)の差分。
この全体の動きを1つの大きなブラックボックスとしてまとめたものを「一巡伝達関数(開ループ伝達関数)」や「閉ループ伝達関数(総合伝達関数)」と呼びます。
3. 最重要:閉ループ伝達関数の導出ルール
試験で最も頻出するのは、このフィードバック系全体の伝達関数 W(s) を求める計算です。以下の「分母は 1 + 一巡」という呪文を覚えておけば一瞬で解けます。
$$W(s) = \frac{G(s)}{1 + G(s)H(s)}$$
- 分子:入力から出力へ向かう「前向き」のルートそのもの。
- 分母:1 +(ぐるっと回る一巡のルート $G \times H$ )。
※フィードバックがマイナス(負帰還)の場合は分母が「+」、プラス(正帰還)の場合は分母が「-」になりますが、電験で扱う制御系はほぼ100%「負帰還(+)」です。
4. なぜ伝達関数が重要なのか?
伝達関数が分かると、そのシステムが「安定しているか(暴走しないか)」を数式だけで判断できるようになります。
分母の式 1 + G(s)H(s) = 0 を「特性方程式」と呼びます。この方程式の解(極)が複素平面上のどこにあるかを見るだけで、実際の設備を動かさずとも、その挙動(振動するか、収束するか)を完全にデバッグできるのです。

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