【電験2種 2次試験対策】公式とグラフが繋がる!ボード線図の体系的完全ガイド

前回は折れ線近似の「描き方」に特化しましたが、対数の公式 $$g = 20 \log_{10} |G(j\omega)|$$ こそが、ボード線図の根幹をなす最重要ルールです。

この公式がなぜ必要なのか、そしてそれがグラフの形にどう結びつくのか。基礎から応用まで、ボード線図の全体像を体系的に解説し直します。

1. ボード線図の目的:周波数応答の「見える化」

あるシステム(伝達関数 G(s) )に、周波数 ω のサイン波を入力したとき、出力される波が「何倍の大きさになるか(ゲイン)」と「どれくらい遅れるか(位相)」をまとめたものが周波数応答です。

これを横軸に周波数 ωをとり、縦軸にゲインと位相を並べて描いたものがボード線図です。

2. なぜ 20 log10 が必要なのか?(デシベルの魔法)

ここで、公式が登場します。

$$g = 20 \log_{10} |G(j\omega)|$$

伝達関数の絶対値 |G(jω)| は「ただの倍率」です。しかし、実際のシステムでは、倍率が 0.001倍 から 1000倍 まで極端に変化します。これをそのままグラフに描くと、小さな変化が潰れて見えなくなってしまいます。

そこで、対数( log10)をとって「デシベル(dB)」という単位に変換します。

$$倍率 1倍 = 20 \times \log_{10}(1) = 0 \text{ dB}$$

$$倍率 10倍 = 20 \times \log_{10}(10) = 20 \text{ dB}$$

$$倍率 100倍 =20 \times \log_{10}(100) = 40 \text{ dB}$$

$$倍率 0.1倍 = 20 \times \log_{10}(0.1) = -20 \text{ dB}$$

このように、$$20 \log_{10}$$ の公式を通すことで、巨大な桁数の変化を「足し算・引き算の世界」にスケールダウンできるのです。

3. 直線の足し算になる理由(対数の最大のメリット)

自動制御の伝達関数は、複数の要素の掛け算でできています。

たとえば $$G(s) = G_1(s) \times G_2(s)$$ のような形です。

これを $$20 \log_{10}$$ の公式に入れると、対数の性質$$\log(A \times B) = \log A + \log B$$ により、掛け算が「足し算」に変わります。

$$20 \log_{10} |G_1 \times G_2| = 20 \log_{10} |G_1| + 20 \log_{10} |G_2|$$

つまり、複雑なシステムのボード線図を描くときは、基本となるシンプルな要素(比例、積分、一次遅れなど)のグラフを個別に描き、それを「グラフ上で縦に足し合わせるだけ」で全体のグラフが完成します。これがボード線図最大の利点です。

4. 基本要素のグラフの形(折れ線近似の正体)

試験で頻出する「一次遅れ要素」 $$1 / (1 + j\omega T)$$ を例に、公式がどうグラフになるかを見てみましょう。

ゲイン g は公式より以下のようになります。

$$g = 20 \log_{10} \frac{1}{\sqrt{1 + (\omega T)^2}}$$

これを真面目に計算すると曲線になりますが、両極端な周波数で近似(簡略化)します。

【低周波領域】 ωが非常に小さいとき

$$(\omega T)^2$$ はほぼ 0 になるため、公式の中身は 1 / 1 になります。

$$g \approx 20 \log_{10}(1) = 0 \text{ dB}$$

つまり、低い周波数では 0 dB の「水平な直線」になります。

【高周波領域】 ω が非常に大きいとき

1 を無視できるため、公式の中身は $$1 / \omega T$$ になります。

$$g \approx 20 \log_{10} \left( \frac{1}{\omega T} \right) = -20 \log_{10}(\omega T)$$

これは、「周波数 ωが 10倍 になるごとに、ゲインが 20 dB ずつ減る」ことを意味する数式です。これが傾き -20 dB/dec の「右肩下がりの直線」の正体です。

【折れ点周波数】

水平な線と右肩下がりの線が交わる点が、 $$\omega T = 1 となる \omega = 1/T$$ の地点です。

5. 体系的アプローチのまとめ

ボード線図の問題に対峙したときは、以下の体系で処理します。

  1. 分解: 複雑な伝達関数を、積分要素( 1/s )や一次遅れ要素などにバラバラにする。
  2. 個別の評価: それぞれの要素の折れ点周波数を求め、簡単な直線(水平、あるいは -20 dB/dec の傾き)をイメージする。
  3. 合成: 対数の性質を利用して、それらの直線を足し合わせて全体の概形を描く。
  4. 具体値の計算: 特定の周波数での正確な値を聞かれたら、近似図ではなく $$20 \log_{10} |G(j\omega)|$$ の公式に直接数値を代入して計算する。

いかがでしょうか。

単なる倍率をデシベルに変換するだけでなく、複雑な掛け算を「直線の足し算」という図形パズルに変えてくれる魔法の公式です。

ボード線図のゲイン合成演習

それでは、いよいよ「 20log10 の公式」を使って、具体的な数値を計算しながらグラフを合成していく実践演習に入りましょう。

複雑な伝達関数を「簡単なパーツ」に分解し、それぞれのデシベル(dB)を計算して足し合わせる。このプロセスを一度自分の手を動かして体感すると、ボード線図が単なる暗記グラフではなく、理詰めのパズルであることがはっきりとわかるはずです。

1. 【演習問題】伝達関数の設定と分解

以下の伝達関数 G(s) のボード線図(ゲイン線図)を、各周波数でのゲインを計算しながら合成して描いてください。

$$G(s) = \frac{10}{s(s+1)}$$

ステップ1: s に jω を代入して周波数応答の形にする

$$G(j\omega) = \frac{10}{j\omega(1+j\omega)}$$

ステップ2: 20log10 の公式に入れて、パーツごとに足し算の形に分解する

ゲイン g を求める公式 g = 20 log10 |G(jω)| に当てはめます。

対数の性質(割り算は引き算、掛け算は足し算になる)を使うと、この複雑な式は以下の3つのシンプルなパーツに分解されます。

$$g = 20 \log_{10}(10) – 20 \log_{10}(\omega) – 20 \log_{10}\sqrt{1+\omega^2}$$

・パーツA(定数ゲイン): 20 log10(10)

・パーツB(積分要素): – 20 log10(ω)

・パーツC(一次遅れ要素): – 20 log10( √(1+ω^2) )

ここからは、代表的な3つの周波数( ω = 0.1、ω = 1、ω = 10 )を代入して、各パーツの dB がどう変化し、合計でいくつになるかを計算してみましょう。

2. 周波数ごとのゲイン計算と合成

【計算1: 低周波 ω = 0.1 のとき】

・パーツA: 20 log10(10) = 20 dB (※周波数に関係なく常に一定です)

・パーツB: – 20 log10(0.1) = – 20 × (-1) = 20 dB

・パーツC: – 20 log10( √(1+0.01) ) ≒ – 20 log10(1) = 0 dB

合計ゲイン: 20 + 20 + 0 = 40 dB

【計算2: 折れ点周波数 ω = 1 のとき】

・パーツA: 20 log10(10) = 20 dB

・パーツB: – 20 log10(1) = 0 dB

・パーツC: – 20 log10( √(1+1) ) = – 20 log10(√2) ≒ – 3 dB

(※折れ線近似ではここを 0 dB とみなしますが、正確に計算すると 3 dB 下がります)

合計ゲイン: 20 + 0 - 3 = 17 dB

(※近似図の直線上では 20 dB の位置になります)

【計算3: 高周波 ω = 10 のとき】

・パーツA: 20 log10(10) = 20 dB

・パーツB: – 20 log10(10) = – 20 dB

・パーツC: – 20 log10( √(1+100) ) ≒ – 20 log10(10) = – 20 dB

合計ゲイン: 20 - 20 - 20 = – 20 dB

3. 計算結果から読み解く「直線の傾き(スロープ)」

いま計算した3つの結果(近似値)を、周波数の変化に沿って見てみましょう。

・ω = 0.1 のとき: 40 dB

・ω = 1 のとき: 20 dB

(周波数が10倍になると、ゲインは 20 dB 減っている → 傾き -20 dB/dec)

これは、パーツC(一次遅れ)がまだ 0 dB で眠っており、パーツB(積分要素)の -20 dB/dec という傾きだけが全体のグラフに影響を与えている状態です。

・ω = 1 のとき: 20 dB

・ω = 10 のとき: -20 dB

(周波数が10倍になると、ゲインは 40 dB も減っている → 傾き -40 dB/dec)

ここがボード線図の最も面白いところです!

折れ点周波数 ω = 1 を超えた瞬間、パーツCが目を覚まして -20 dB/dec のペースで下がり始めます。

すると、もともと下がり続けていたパーツBの傾き(-20)と、パーツCの傾き(-20)が足し合わされ、全体のグラフはさらに急勾配の「傾き -40 dB/dec」へと折れ曲がるのです。

まとめ:公式と折れ線グラフの完全なる一致

  1. 分解したパーツごとに 20log10 の数値を計算する。
  2. それらを縦に串刺しにして足し合わせる。
  3. すると、特定の周波数(折れ点)を境に、直線の傾きが足し算されて急激に変化する。

これが、前回の「折れ線近似ルール」の裏側で起きている数学的な真実です。

「特定の周波数でのゲインを求めよ」と言われたら今回の計算を行い、「全体の安定余裕を見よ」と言われたら傾きの足し算でサッと概形を描く。

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