電験2種の「電力・管理」科目において、多くの受験生が最初に壁を感じるのが「地絡・短絡の故障計算」です。しかし、この分野はひらめきやセンスを必要とせず、決まった手順(アルゴリズム)通りに処理をすれば必ず正解にたどり着く、極めて強力な得点源になります。
この計算をシステマチックに処理するために不可欠なのが、「%Z(パーセントインピーダンス)法」と「対称座標法」という2つの強力なツールです。
1. ツール①:%Z法 =「システム全体のスケーリング(正規化)」
現実の電力系統には無数の変圧器が存在し、電圧が 500kV、66kV、6.6kV と段階的に変化します。これをそのままオーム(Ω)で計算しようとすると、変圧器を通過するたびに電圧比の2乗でインピーダンスを換算し直す必要があり、計算ミスが多発して破綻してしまいます。
これを解決するのが「%Z法」です。
システム全体で共通の「基準容量 Pn (たとえば 10MVA や 100MVA など)」を設定し、すべての機器のインピーダンスをその基準に対する「割合(%)」に変換(スケーリング)します。
一度すべてを共通の基準で %Z に統一してしまえば、途中の変圧器の存在を無視し、システム全体を「単一の直列・並列回路」としてシンプルに計算できるようになります。
【短絡計算の基本公式】
基準容量 Pn で統一した結果、電源から事故点までの合成インピーダンスが %Z になったとします。このとき、事故点に流れ込む短絡容量 Ps は以下の式で求まります。
$$ P_s = P_n \times \frac{100}{\%Z} $$
また、基準電流を In、短絡電流を Is とすると、電流についても同じ関係が成り立ちます。
$$ I_s = I_n \times \frac{100}{\%Z} $$
これは「電流を制限するブレーキ(%Z)が 100% なら基準容量と同じエネルギーしか流れないが、ブレーキが 20% なら基準の5倍のエネルギーが流れ込む」という、非常に直感的な反比例の法則を表しています。
2. ツール②:対称座標法 =「不平衡の分解フィルター」
三相短絡事故のように、3つの相がすべて等しく短絡する場合は、バランスが保たれているため1相分だけを取り出して計算(単相等価回路)すれば済みます。
しかし、「1線地絡事故(1本の線だけが大地に接触する)」が起きると、三相の電圧・電流のバランスが大きく崩れます。この不平衡な状態をそのまま複素数で計算するのは、数学的に極めて困難です。
そこで用いるのが「対称座標法」です。
どんなにバランスが崩れた不平衡な状態でも、数学的な変換行列を用いることで、以下の「3つの完全にバランスの取れた仮想的な回路」に分解することができます。
- 正相(せいそう)成分: 平常時と同じ、綺麗なバランスで時計回りに回転する成分。発電機が起電力を持つのはこの回路のみです。
- 逆相(ぎゃくそう)成分: 正相とは逆回転(反時計回り)する成分。事故時など不平衡な状態のときのみ現れます。
- 零相(れいそう)成分: 三相すべてが同じ大きさ・同じ位相で動く成分。大地を帰路とするため、「地絡」が発生したときにのみ現れるのが最大の特徴です。
複雑な事故回路を直接解くのではなく、この「正相」「逆相」「零相」という3つのシンプルな回路(それぞれのインピーダンスを %Z1, %Z2, %Z0 とします)を個別に計算し、最後にもう一度合成して現実の不平衡な値に戻すのが、対称座標法のアプローチです。
3. 計算の全体ワークフロー
実際の試験問題では、以下のステップで解答を組み立てていきます。
- 基準の統一: 与えられたすべての機器のインピーダンスを、共通の基準容量の %Z に換算する。
- 仮想回路の作成: 対象系統の「正相回路」「逆相回路」「零相回路」をそれぞれ描き、各回路の合成インピーダンス( %Z1, %Z2, %Z0 )を求める。
- 事故条件の適用: 1線地絡や2線短絡など、事故の種類に応じた条件式を用いて、対称分電流・電圧を計算する。
- 現実の値へ復元: 計算した対称分を合成し、実際の事故電流や健全相の電圧上昇を求める。

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