ラウスの安定判別法は、特性方程式の係数から代数的に判定する手法でした。しかし、実際の制御設計では「どのくらいの余裕を持って安定しているのか」という強靭さ(ロバスト性)を評価するために、周波数応答を用いた判定法が多用されます。
電験2種の2次試験において、ラウスと並んで重要になる「ナイキストの安定判別法」と「ボード線図」について解説します。
1. ナイキストの安定判別法:複素平面上の軌跡
ナイキスト線図とは、一巡伝達関数 G(s)H(s) において、s = j\omega とおき、周波数 \omega を 0 から \infty まで変化させたときに複素平面上に描かれるベクトル軌跡のことです。
判別ルール:
一巡伝達関数の軌跡が、点 (-1, j0) を左側に見るように通過すればシステムは安定です。
もし軌跡が点 (-1, j0) を右側に巻き込むように通る場合、そのシステムはフィードバックによって増幅が繰り返され、発散(不安定)してしまいます。この点 (-1, j0) は「安定と不安定の境界線」となる極めて重要なポイントです。
2. ボード線図:ゲインと位相のグラフ化
ボード線図は、横軸に周波数(対数スケール)、縦軸に「ゲイン(大きさ)[dB]」と「位相 [deg]」を並べて描いたグラフです。ナイキスト線図の情報を、より直感的に読み取れるように展開したものと言えます。
ボード線図による安定判別:
- ゲイン交差周波数:ゲインが 0 \text{ dB}(倍率1倍)を横切る周波数。
- 位相交差周波数:位相が -180 \text{ deg} を横切る周波数。
システムが安定であるためには、ゲインが 0 \text{ dB} になったときに、位相がまだ -180 \text{ deg} よりも上にある(遅れが少ない)必要があります。
3. 合否を分ける重要指標:安定余裕
2次試験の論説や計算で頻出するのが「あとどれくらいで不安定になるか」を示す指標、すなわち「安定余裕」です。
- 位相余裕(PM):ゲインが 0 \text{ dB} の地点において、位相が -180 \text{ deg} からどれだけ浮いているか。
- ゲイン余裕(GM):位相が -180 \text{ deg} の地点において、ゲインが 0 \text{ dB} からどれだけ下がっているか。
これらがプラスの値であればシステムは安定です。設計の現場では「位相余裕は 45 \text{ deg} 以上確保する」といった指標として使われます。
4. 手法の使い分け:ラウス vs ナイキスト・ボード
- ラウスの安定判別:伝達関数の形がわかっているときに、機械的に安定性を判定するのに向いています。
- ナイキスト・ボード:システムの「余裕度」を視覚的に把握したり、実験データ(周波数特性)から逆算して安定性を評価したりするのに向いています。
試験では「ナイキスト線図を描け」という問題や、ボード線図から「安定余裕を読み取れ」という形で出題されます。

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